新型コロナウイルスが大学入学者選抜にもたらした影響
新型コロナウイルスの影響により、米国の大学は入学者選抜におけるテストスコアの扱いを変更することを余儀なくされました。その対応として多くの大学が「テスト・オプショナル」もしくは「テスト・ブラインド」ポリシーを導入しています。
「テスト・オプショナル」とは、スコア提出を任意とする方針です。スコアを提出しない場合にも出願は可能ですが、提出すれば評価の対象となります。多くの場合、SAT®やACT®のスコア提出が認められています。新型コロナウィルスの影響によりこれらの試験が相次いで中止となったため、2021年卒業の高校生に対しては多くの大学がこの方針を採用しました。それ以降の学年については大学によって対応が分かれていますが、現在の状況を鑑みるに、数年はこの方針が続くと考えられます。
一方「テスト・ブラインド」とは、スコア提供を必要とせず、仮に提出しても評価としては考慮しないという方針です。「テスト・オプショナル」ほど一般的ではありませんが、新型コロナウイルスの影響により導入する大学が増えています。この方針は、SAT®やACT®のような形式の試験が、一部の学生にとって彼らの本来持つ資質に対し極端に難しく感じられるという実態を背景に採用されました。テストスコアという基準を完全に取り払い、テストスコアで能力を示すことが困難な学生もそうでない学生も、平等に資質を測ることを目的としています。
2019年にはアメリカ全体のおよそ50%の大学がテスト・オプショナルを実施しており、新型コロナウイルスの影響下で更に30%の大学がこれを導入しました。しかしながら、テストブラインドポリシーが、テスト・オプショナルのように拡がる可能性は低いとみられています。
大学が今後テストブラインドポリシーを採用する可能性について、ACT, Inc. の調査によると、新型コロナウイルスの影響によりテスト・オプショナルを導入した大学の52%、それ以前から導入していた大学の44%が、今後テスト・ブラインドを採用する可能性は低いと回答しています。その理由として「テストスコアの利便性」が挙げられています。多くの大学にとって、テストスコアは資質を測る上で最も汎用的な指標のひとつだといえるでしょう。
スコア提出が任意になったとはいえ、未だ多くの大学が入学者選抜においてテストスコアを評価に加味しています。上述の調査に回答した大学のうち、3分の2以上が選考過程でテストスコアを利用し、また約6割の大学が奨学金の選考において判断材料にしていると答えています。現状、テストスコアなしでは見込みのある学生を見つけることが困難であり、このことがテスト・ブラインドを導入する際の大きな課題となっています。
新型コロナウイルスの影響により大学入学者選抜のプロセスはテスト・オプショナルの動きが見られるものの、未だに多くの大学がテストスコアを基に評価を行っています。昨年は中止となった試験も現在は再開されているので、仮に志望する大学がテスト・オプショナルであっても、これまで通りSATなどの試験を受験しスコアを用意したうえで出願することが望ましいでしょう。