英国の教育改革 Aレベルから「Advanced British Standard」へ
2023年10月、英国のスナク首相は、現行のAレベルおよびTレベルを、将来的に「Advanced British Standard」(以下ABS)に統合・刷新する予定であると発表しました。
Aレベル(General Certificate of Education Advanced Level)とは、16歳から18歳の学生を対象とする教育プログラムで、高校卒業および大学入学資格として、英国を中心に広く世界中で普及しています。英語、数学、サイエンス、社会学など様々な分野の中から科目を選択し、大学への出願に向けて最低3科目の資格取得が必要となります。一方のTレベルは、専門職に特化した働きながら学べるコースです(留学生はTレベルを選択することができません)。
今回英国政府が発表したABSの一番の特徴は、Aレベルが3科目必修であったのに対し、5科目が必修となる点です。現段階での構想では、3科目をメジャー(主専攻)、2科目をマイナー(副専攻)として選択し、メジャーはより詳しく学習し、マイナーはメジャーと比較すると負担の少ない科目となる見込みです。形式としては、6科目を履修するIB(国際バカロレア)に近付くと言えるでしょう。もう一つの特徴は、全員が高校卒業まで何らかの形で英語と数学を学ぶことになるという点です。スナク首相はかねてより、18歳まで数学を学び続けることの重要性を説いてきましたが、ABSで英語と数学を必修にすることにより、国民の国語力と数学力を底上げする狙いがあるようです。ABSの導入により、16歳~18歳の2年間の授業時間数は最低でも1,475時間となります。現行の制度よりも約200時間増加し、デンマーク、オランダ、ノルウェーなどの国々と同等の授業時間数となる見込みです。
英国政府は、ABS導入に向けての教師数確保、および教師の研修のための初期費用として、2年間で6億ポンド(約1,000億円)を拠出することを明言しています。ABSが導入されれば現行のAレベルおよびTレベルは廃止される予定ですが、政府はABSの施行には10年はかかると目算しています。つまり、実際に導入されるのは早くても2033年頃となります。それまでは、引き続きAレベルが大学入学資格として使用され続ける予定です。ABS導入までにはまだ時間がありますが、現在小学校低学年の生徒様で、将来的に英国大学進学やAレベルの資格取得を視野に入れている方は、今後の動向を注視する必要があるでしょう。
GOV.UK The Education Hub 「The Advanced British Standard: Everything you need to know」 参照日:2024年4月13日
BBC 「Advanced British Standard: Sunak qualification will replace A-levels and T-levels」 参照日:2024年4月13日