マサチューセッツ工科大学 SAT®・ACT®スコアの提出を再び必須に
マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)は、2023年入学の試験からSAT®・ACT®のスコア提出を再び出願要件に含めることを発表しました。新型コロナウイルスのパンデミックにより、多くの大学がテストスコアの提出を任意もしくは不要としてきましたが、その流れが変わることになるのでしょうか。
MITの入学試験事務局長であるStuart Schmill氏はSAT®・ACT®スコアの再導入について、SAT®デジタルテストの導入等で受験機会が増えたこと、共通テストが選考の透明性・公平性の向上に役立つことを理由に挙げています。また研究チームによる調査の結果、SAT®・ACT®などの共通テストは学生の学力を測るだけでなく、資質を持っていても経済的な理由のために、より発展的な教育を受ける機会のない学生を見つけることにも役立つことが分かったとしています。
加えて、MITが数学を重視していることもこの決定に繋がったとみられます。「何故共通テストがMITへの学問的な準備の程度を予測できるのかは説明がつきませんが、我々の教育における数学、および数学の試験の重要性が関係していると考えています。*1」とSchmill氏は語っています。MITに入学した学生は、専攻に関わらず一般教養として数学や物理の授業を履修することになります。しかしこれらの科目の最終試験を突破しなければ、次の学年へ進級することができません。MITで学ぶには数学の基礎を十分に習得していることが求められるため、大学側もそのことを確認する必要があるのです。
ただし、テストスコアはあくまで出願者の総合評価における指標の一つにすぎません。高校での成績や、困難から立ち直る力、大学のリソースを活用する自発性などから、学生がMITに適しているかを多角的に判断する点では他の大学と同様です。Schmill氏は、共通テストの再導入に不安や批判の声があることに理解を示し、次のように述べています。
「あなたはテストスコアそのものではありませんし、さらに言えばMITのアプリケーションでもありません。あなたの資質は、これらの限られた評価では捉えきれないでしょう。(中略) MITが下す決定は、決してあなたを人間として評価しているのではなく、MITの挑戦に一緒に取り組む人を、ある特定の時期に、特定のチームとして、偶発的に選ぶということなのです。*1」
一方で、出願プロセスにおいて共通テストの除外を続けている大学も多く、ハーバード大学は2026年まで、スタンフォード大学は2022年度のテストスコアの提出を任意とすることが決まっています*2。他大学の今後の動向は不透明ですが、MITと同様にテストスコアの提出を再開する大学が出ることは充分に考えられます。このコラムでは過去にもテストスコアの重要性をお伝えしましたが、出願準備にあたっては、志望する大学の情報をチェックしながら、共通テストにも対応できるよう対策することをお勧めします。
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*2“Is MIT an outlier in bringing back test scores or are other colleges following its lead?”, By: Chris Burt, University business, March 29, 2022